Antiq&Vint時計修理の費用対効果
ABUNDANT TIME 代表 壽藤
当店のオーバーホールや修理には、店頭やネットからのお申込みのほか、姉妹店の経由からのご依頼、並びに販売前の時計のオーバーホールなどがございます。
お預かりした時計の中には現行モデル以外にも、アンティークやビンテージ・モデルも多
くございます。
オリジナル・ムーブメントを除いた現行モデ
ルの場合、材料店さんなどのご協力により、
多くの場合は当該パーツのご用意可能ですが
アンティークやビンテージともなると、そう
簡単には参りません。
しかしながら、当店では可能な限り
“ネジ1本でも同年代のパーツを用いるべき”
と考えております。
特に他店で断られた時計をオーバーホールし
た際に多く見受けられますが、年代相違のパ
ーツなどが判明した場合は、お客様にご了承
を頂いた後、同年代パーツに交換(別途ご負
担)させていただいております。
それでも、パーツのご用意が難しい場合は別
途作製致します。費用もお時間も掛かりますが、お時間・ご予算に応じて如何様にも対応
可能でございます。
こちらは約80年前の時計。
今回は写真のようにパーツ交換が可能なドナー・ムーブメントを3つ使っております。
使えそうなパーツそのまま移植して使えるのか?残念ながらそう易々とは参りません。
同タイプのムーブメント(キャリバー)でも、古い時計は主要パーツに個体番号がありますので、そのまま組み替えてもハマらなかったり、動作が不安定になったりします。
また、ナンバー表記の無いネジ1本の交換でさえも精度に大きく影響する場合もございます。現代ほど製造技術が高くなかった時代に作られた時計は、1つ1つの個体差が大きいようですね。
今回は巻き真とテンプ受け、天真の交換をしておりますが、特にテンプ受けが斜めに擦り減っておりました。暑さ0.01 mmのシワが寄りにくい硬質アルミ・シートを用いテンプ受けの水平を造ります。
この処理によってテンプのアガキ量が正しくなり、テンプの振りがスムーズ、且つ振り角も安定し、精度が出るようになりました。
これ以外にも諸々問題がございましたが、作業時間は丸1日掛かりました。それでも比較的仕上がりが早い方でございます。1本の修理に数ヶ月掛かる事はごく稀ですが、3〜4週間掛かる事はよくございます。
出来る事、やるべき事を全て行い、まだ見ぬ時計の神にお祈りして眠る日もございます(笑)
不安を抱かせないAntiq&Vint修理~
下部掲載写真は他店購入された直後、当店へお持ち込みになったお客様の時計のケーシングやムーブメント内部です。
学生だったら「もう1回、ちゃんと洗って来て!」と言い放ちます📢
最終クォリティ・チェックはしているのでしょうか?巨大な毛ゴミです。インデックスの浮き上がりも気になります。
見えない箇所なのでシッカリと修理致します……。「それ本当にやっていますか?」
と、当店HPのご挨拶でも謳っておりますが
、このようなケースを見るたびに深甚に思
います。
振りも精度も悪く、ムーブメントもケーシ
ングも綺麗ではありません。問題なのが、
これが時計として機能してしまっているこ
となのです。
しかしながら、時間や費用を掛けた結果がこれではあまりにも時計が可哀想。と考えてしまうのは私だけなのでしょうか?
この他にも自社で販売されたにもかかわらず、その時計の修理をお断りする。結果、お客様が当店へお持ち込みになるケースが増えております。お客様はさぞ辟易されたことでしょう。
姉妹店「きよみのアンティーク」では以前より“アンティーク・ビンテージ時計をお求めの際は必ず専門店でご購入下さい”とずっとお伝えしております。
当店としては“自社で修理をされている専門店でご購入下さい”と付け加えさせて頂きたく存じます。
とは言うものの、お客様にとっては計り知れない実態であり、仮に伺ったとしても「うちは大丈夫ですよ。」と言われてしまえば、施す術が無いことではございますが……。
引き続き、こうした実態に警鐘を鳴らし、お客様にご安心いただけるAntiq&Vint修理が広がるよう啓蒙活動を続けて参る所存でございます。