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100均ハンマーでデスクをDIY

ABUNDANT TIME 代表 壽藤

バイス・プレートの取り付けを…

やらなきゃいけないっ。やらなきゃ。

ワークベンチ(デスク)にバイス・プレートを取り付けるのですが、サイズぴ

ったり過ぎて入りません。

互いにぴったりサイズって非常に困ります。

歪みもありますので、どちらか絶対に削らないといけません。

その為に今後使うことの無いであろう工具を「やらなきゃっ」と思う度に購入

したりしておりました。

・100均で「ハンマー」を。

・モノタロウで「ノミ3本セット」を。

これが3本とも全て刃が出ていない為、まったく使い物にならず、グラインダ

ーで刃を作りました。

・皿ネジを。

ネジ2個くらい付属してくれる優しさは無いものか。プレートを留める為の

「頭の大きい皿ネジ」が必要になったのですが何故か全く売っておらず、海外

サイトから取り寄せました。

本当はシルバーが良かったのですがコストを抑えるために選べず、主張の強い

金色に。そして乗り合い船便で約2ヶ月。

アンティークやヴィンテージの時計を修理する際、海外からドナーのパーツが

届くまで1ヶ月以上掛かることは、現在ではそれほど多くありません。

現行の既製品ネジの輸入にこんなにも時間が掛かるなんて。一気に作業出来な

いことへのもどかしさが募っておりましたが、やっと全て揃いましたので一気

に仕上げます。

ノミで削っていきます。ハンマーでガンガン叩く力作業は得意ではありません。

最初、硬いメラミン化粧板がおっかないので、慎重になり過ぎて全く削れませ

んでした。やるぞっ!と心を決めて削ぐように叩きます。

手前の角が欠けてしまいました。

メラミン化粧板なので欠けてしまうのは致し方無いのですが、メンタル・ダメージが…。

とは言え、数十万するワークベンチを買い替える訳にはいきませんので、良い

仕事をして忘れることにします。

出来ました!

新型プレートは時計師の腕が引っかからないよう、エッジがラウンド処理されています。

心配りが嬉しいですね。

是非、皿ネジのことも考慮していただきたい。工具は柄が短くバランスの良い

「100均のハンマー」が一番優秀でした。

このプレートをどのように使うのかご説明しますと、プレートに自作の「すり

台」を連結させて、ドライバーの先を研いだり、ピンセットを研いだり、糸ノ

コで素材やパーツを切ったり、万力を固定したりします。

すり台は木製なので使って行くうちに減っていきます。私のスリ台は4代目に

なります。このプレートが「全く必要が無い。」という時計師さんもいらっし

ゃいますが。私の場合は絶対に必要です。最大の理由は毎日必ず作業前にドラ

イバーの先とピンセットを研ぐからです。

ドライバーの先にキズが入った状態で、修理作業を進行してしまうとネジ凹の

「ー」の部分をキズ付けたり、滑ってムーブメントをキズ付けたりしてしまい

ます。ドライバーとネジの直径は合っていても、ネジ凹の「ー」の深さや幅の

サイズは様々です。その都度、時計師はドライバーの先を削り、薄くして深さ

を持たせたり、短くして幅を持たせたりします。

ドライバー研ぎは、ネジ1本でもキズ付けてしまう可能性のリスクを回避する

為の作業です。ドライバーとネジの直径を合わせなかったり、先端の形をフラ

ットに研がずに作業してしまうと、ネジ凹の「ー」の形が「><」のように左

右が広がってしまいます。

私達はコレを「ネジが笑ってる」「爆笑してる」などと呼んだりします。

笑っているネジ
完全に違うドライバーを使っています

特に金無垢ケースには金のネジが使われていることが多いので、ドライバーの

調整を怠ってしまうと大変なことになってしまいます。

アンティークでも現行モデルでも、金無垢ケースの時計は圧倒的に女性のお客

様の方が多くご所有されており、当店の姉妹店きよみのアンティークでは時計

ほとんどが金無垢ケースになります。勿論、当店では金無垢のほかステンレス

スチールの時計の修理もお承りしておりますが、全く同じ前準備をして作業に

入ります。

4代目スリ台

ピンセットもドライバー同様に毎日研ぐ作業を必要とします。色々なパーツを

掴んでいるうちに、ピンセットの内部には必ずキズが付きます。

キズが付くとどうなるのか?

掴んだパーツが滑りやすくなり、パーツがつかみ難くなり、つかんだパーツが

滑り、飛ばし、無くす。本当に最悪のパターンですね。

お預かりした時計は勿論ですが、ドナーパーツが無い時計の事後対応を考えた

だけでゾッとしてしまいます。こうした理由から、学生でもベテラン時計師でも

「仕事前には必ずドライバーとピンセットを研ぐ」

という事前作業は必須となります。

とは言っても全てのドライバーをその都度研いだり、ネジのサイズに合わせた

りするのは大変時間が掛かります。メーカーや大きな修理会社では、自分が修

理を担当する機械の種類は大体決まっています。このキャリバー(機械)だっ

たら、このドライバーセット。と、既にサイズを合わせたドライバーセットを

何組みかベンチの上に用意しています。

よって、ドライバーの先が変形したり、面がキズついて来たら、ササっと修正

することで済みます。時計師がドライバーセットを幾つも持っているのは、こ

うした理由からです。

プレートに合わせて綺麗にカット出来ました。

取り付け作業の為にベンチトップを剥がしたら、切れてしまいましたので、

新しいモノに張り替えました。本当は以前使っていたパーツが見つけやす

い“黒色”が良かったのですが、在庫切れとのこと。ベルジョン的には“白色”

をオススメしているようなので、試しに使ってみることにしました。

これが意外とパーツが見つけやすい。むしろ黒色より良いかも知れません。

そういえば大量にある、ダストカバートレイも“白色”でしたので、結果的

にスッキリしてバランスが非常に良くなりましたね。

俄然やる気が出て参りました。

次はベルジョンのバイスが欲しいところですが、緑色のタイプでは無く

て、新しい「横浜ネイビーカラー」が欲しいですね。

ABUNDANT TIME 代表 壽藤